<日本人塾> 191. アインシュタインの頭脳に学ぶ: 天才とは、専門を極める努力のたまもの
全国・全世界の日本人のための
(私塾) 日本人塾 「日本人」
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頭脳研究 天才たちの頭脳はいかにしてつくられたか? 先天的に頭脳がどうであったかが問題ではなく 後天的学習・研究で頭脳がどう形成されたかが問題なのだ アインシュタインの脳に学ぶ |
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本テキストの精読は、(私塾)日本人塾「日本人」の専用コースでご利用いただけます <参考> 専用コース紹介 |
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<レベル> 内容的・言語的に、中学生~ |
アインシュタインの脳については、数学や物理などの理系才能と脳の構造との関係ということで、大きな関心を持っている。この問題について、主にウィキペディア英語版をもとに、簡単にまとめておきたい。
但し、初めに断っておけば、私、日本人塾のトレーナーは、脳のことについてはまったくの素人である。したがって、ウィキペディアや辞書をもとに可能な限り調べて書いているが、その理解や専門用語の使い方などでおかしな点が多々あるかもしれない。以下は、そのような、瑕疵(かし)の可能性があるものとして読んでいただきたい。
1.それは、アインシュタインの死から始まった
具体的な天才の脳の研究ということでは、アインシュタイン(Albert Einstein, 1879 - 1955)の脳が今に残り、その構造の特殊性と彼の天才的研究との相関関係などについての研究が進められている。
<参考> ●「アルベルト・アインシュタイン」(ウィキペディア) ●「アインシュタインの脳」(ウィキペディア)
アインシュタインは、76歳のその死まで、アメリカのニュージャージー州にある高等研究所(日本では「プリンストン高等研究所」が通称であるが、正式名称は「Institute for Advanced Study」で、「プリンストン」はない。有名大学プリンストン大学とは別組織であるが、活発な相互交流がある)で現役の研究者としてあった(「Einstein was affiliated with the Institute for Advanced Study in
Princeton, New Jersey, until his death in 1955.」(「Albert Einstein's brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)。そして、腹部大動脈瘤(Abdominal aortic aneurysm)破裂で、プリンストン病院(プリンストン大学病院。University Medical Center at Princeton(ウィキペディア英語版)で1955年4月18日午前1時過ぎに亡くなる。
<参考> ●「プリンストン高等研究所」(ウィキペディア) ●「Institute for
Advanced Study」(ウィキペディア英語版)
2.解剖医Harveyによる、アインシュタインの脳の無断摘出
アインシュタインの遺体は、同病院の解剖医T. S. Harvey(「当時、プリンストン・メディカル・センターの病理学長」(杉元賢治「天才と教育(I):アインシュタインの脳」(近畿大学教職教育部 教育論業 第11巻第1号。平成11年7月25日発行 抜刷)))によって、同18日の8時に解剖され(「The autopsy was conducted at
Princeton Hospital, Princeton NJ, on April 18 at 8:00 am.」(「Thomas Stoltz
Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用))、併せて、脳と両目が摘出された。
「Dr. Harvey sectioned the preserved brain into 170 pieces in a lab at
the University of Pennsylvania, a process that took three full months to
complete. Those 170 sections were then sliced in microscopic slivers and
mounted onto slides and stained. There were 12 sets of slides created with
hundreds of slides in each set. Harvey retained two complete sets for his own
research and distributed the rest to handpicked leading pathologists of the
time.」(「Thomas Stoltz Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
但し、上の記事では「170
pieces」になっているが、下の記事では「about 240 blocks」になっている。
「Harvey photographed the brain from many angles. He then dissected it
into about 240 blocks (each about 1 cm3) and encased the
segments in a plastic-like material called collodion. Harvey also removed
Einstein's eyes, and gave them to Henry Abrams.」(「Albert Einstein's
brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
しかし、このアインシュタインの脳の摘出・標本化は、アインシュタイン本人や家族の了承を得ないで遺体の解剖をおこなったもののようである。
「No permission for the removal and preservation had been given by
Einstein or his family, but when the family learned about the study, permission
to proceed the study was granted as long as the results were only published in
scientific journals and not sensationalised.」(「Thomas Stoltz Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
なぜ、解剖医T. S. Harveyがアインシュタインの脳を摘出し標本化したかについては、「in
the hope that the neuroscience of the future would be able to discover what
made Einstein so intelligent」(「Albert Einstein's brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)、将来の神経科学の発展がアインシュタインの知能の秘密を明らかにするかもしれないとの願いを込めてだったとされる。
アインシュタインの脳/知能の秘密については、アインシュタインの死から60年以上隔てて、現在なお、世界中の多くの人々の関心を集めている。その限り、Harveyの科学者としての判断は科学の発展を促進するという判断指標に立った場合、正当化されうる余地はないわけではないであろう。そのことに鑑み、一部の遺族も学術目的に限定してHarveyの行為を事後承認したのであろう。
しかし、死後の脳・遺体についても死者の尊厳を尊重する形で扱うということにおいて、本人にも家族にも無断で摘出したということは、なにがなし、ファウストがメフィストフェレスに自分の魂を売ったような暗いものを連想させる話ではある。
<参考> ●「ファウスト」(ウィキペディア英語版)
3.Harveyと共に消えたアインシュタインの脳
アインシュタインの脳は、アインシュタイン本人の死後も数奇な運命を辿る。Harveyはアインシュタインの脳を返さなかったため大学病院を追われ(「He was
fired from his position at Princeton Hospital shortly thereafter for refusing
to relinquish the organs」(「Albert Einstein's brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)。但し、出典不明)、アインシュタインの脳と共に人々の前から消える。
次に人々がHarvey、つまりはアインシュタインの脳の行方について知るのは、それから20年以上たった1978年のことである。
「In August, 1978, New Jersey
Monthly reporter Steven Levy published an article, "I Found
Einstein's Brain", based on his interview with Dr. Harvey when he was
living in Wichita, Kansas.」(「Thomas Stoltz Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
そして、また、16年ほどの長い月日がたち、1993年、アインシュタインの脳を探す一人の日本人学者が現れる。当時、近畿大学にあった杉本賢治助教授)がHarvey探しを始めたのだ。彼は、アインシュタインの最後をみとった看護婦にインタビューする(後出杉本論文)など様々な苦労を重ね、ついにHarveyを探し当てる。そして、Harveyにアインシュタインの脳の一部を乞い、手に入れる。このプロセスは、翌年、BBCによってドキュメント映画化された。
「In 1994 documentary Relics:
Einstein's Brain, Kinki University Professor Sugimoto Kenji asks Harvey
for a piece of the brain, to which Harvey consents and slices a portion of the
brain-stem. Footage shows Harvey segmenting and handing over to Sugimoto a portion.」(「Thomas Stoltz
Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
<参考> ●「アインシュタインの脳」(ウィキペディア) ●「Relics: Einstein's
Brain」(ウィキペディア英語版)
<参考> ●杉元賢治「天才と教育(I):アインシュタインの脳」(近畿大学教職教育部 教育論業 第11巻第1号。平成11年7月25日発行 抜刷)
<参考> ●「アインシュタインの脳細胞の標本2つ 新潟大が保管」(原載は新潟日報。その転載記事。つまり、杉本氏がHarveyから入手したアインシュタインの脳の標本とは別に、新潟大学にもアインシュタインの脳の標本があるわけである。記事によれば、「神経病理学の権威で米国のアインシュタイン医科大の故ハーリー・M・ジンマーマン名誉教授から、同研究所長を務めた新潟大の生田房弘名誉教授(79)が 1978、94年に譲り受けた」ものだそうである。)
このように数奇な運命を辿ったアインシュタインの脳だが、最後は、それが取りだされた場所、プリンストン病院(の病理学者Elliot Krauss)へと戻される。
「In 1998, Harvey delivered the remaining uncut portion of Einstein's
brain to Dr. Elliot Krauss, a pathologist at University Medical Center at
Princeton.」(「Thomas Stoltz Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
そして、Harveyその人もまた、アインシュタイン同様、プリンストン病院で、その生涯を閉じる。アインシュタインが亡くなったのは、1955年4月18日午前1時過ぎだったが、それから半世紀以上の約52年を経た2007年4月5日のことである。
「Harvey died at the University Medical Center at Princeton on April
5, 2007.」(「Thomas Stoltz Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
4.アインシュタインの脳の重さ &
漱石の脳の重さ
このように、アインシュタインの脳の構造は、一般の人間のそれとは顕著な違いを見せていた。そして、それは、彼の知能との相関関係を強く示唆するものであった。
では、脳のサイズや重さは関係あるのであろうか?アインシュタインを解剖したHarveyによって取りだされた彼の脳の重さはどうだったのであろうか?
「Einstein's
brain weighed 1,230 grams -well within the normal human range- which
immediately dispelled the concept that intelligence and brain size were
directly related.」(「Thomas Stoltz Harvey」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
アインシュタインの脳の重さは、1,230グラムとされた。標準的な重さ、あるいは、日本人男性のそれについては、1,330グラム程度という数字が見える(「質量の比較」ウィキペディア。2012.4.6引用)ことからすると、むしろ、少し軽めなのかもしれない。むろん、この程度の差は、測り方によっても違ってくるであろうし、誤差の範囲内である。
因みに、夏目漱石(1867 - 1916)の遺体も解剖され、その脳(と胃(漱石は長く胃の病気に苦しんだ))は摘出されている。比較のため、見てみよう。
「漱石の死の翌日、遺体は東京帝国大学医学部解剖室において長與又郎によって解剖される。その際に摘出された脳と胃は寄贈された。脳は、現在もエタノールに漬けられた状態で東京大学医学部に保管されている。重さは1,425グラムであった。」(「夏目漱石」ウィキペディア。2012.4.6引用)
アインシュタインの脳の重さは1,230グラムに対して1,425グラムは少し多いように見えるが、これも、日本人男性のそれについては、1,330グラム程度を基準に誤差の範囲内ではないだろうか。無論、この重さをもとに、どちらが頭がいいなどという議論は、まったくのナンセンスである。
5.単純な脳の重さは、知能とは関係ない!
人間の脳の重さが平均でいくらくらいなものなのかについては、生きている人の脳を取りだして秤(はかり)にかけるわけにもいかないし、また、まったくの素人なので間違ったことを言っているかもしれないが、年齢差や地域差や民族差やなどもあるのではないだろうか。また、測り方自体誤差のないようきちんと統一されているのだろうか?
脳の重さと知能が関係ないことは、ウィキペディアに次のように説明されている。
「脳が、あるいは大脳が大きいほうが頭がいいという俗説がある。これはヒトの大脳が類人猿の大脳よりも大きいこと、高齢者の脳が加齢に伴って萎縮すること、アルツハイマー病などの疾患では病変部が著しく萎縮することなどにも助長されていよう。しかし脳の重さは(特に人の間で)知能の指標とはならないとされる。夏目漱石やアルベルト・アインシュタインの脳は彼らの死後も保存されているが、その重さを量ってみても正常の範囲を出ない。またクジラやゾウは、ヒトより重い脳を持つ。」(「脳」ウィキペディア。2012.4.6引用)
6.脳化指数EQはどうだろう?
因みに、体重が重いほど脳も重くなる傾向があるので、脳の重さと知能との関係では、体重との相関において考える必要があるとのことで「脳化指数(encephalization quotient)」なる指標がある。これは、次のようなものである。
「脳化指数(のうかしすう)、略称EQ (英語: encephalization quotient) は、脳の重さと体重から算出される値である。体重が大きいほど脳も重くなる傾向があるため、それが補正される。」(「脳化指数」ウィキペディア。2012.4.6引用)
具体的に、いくつかの動物のそれを見てみると、次のような数字になる。
「ヒト 0.86 / イルカ 0.64 / チンパンジー 0.30 / ゾウ 0.22 / カラス 0.16 / イヌ 0.14 / スズメ 0.12 / ネコ 0.12 / ウマ
0.10 / ウシ 0.06 / ブタ 0.05 /
ニワトリ 0.03」(「脳化指数」ウィキペディア。2012.4.6引用)
「Human 7.4-7.8 / Bottlenose dolphin 4.14 / Orca
2.57-3.3 / Chimpanzee 2.2-2.5 /
Rhesus monkey 2.1 / Elephant 1.13-2.36 / Dog 1.2 / Cat 1.00 / Horse 0.9 / Sheep 0.8 / Mouse 0.5 / Rat 0.4 / Rabbit 0.4 / Whale 0.18」(「Encephalization
quotient」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
計算式の違いで数値がウィキペディア日本語版とウィキペディア英語版で違っているが、順位は同じである。
なかで、イルカ(「Bottlenose dolphin」は、「バンドウイルカ」。つまり、最も一般的なイルカ)やシャチ(Orca)の脳化指数がチンパンジーよりも高いこと、また、カラスが犬よりも高く、そのカラスよりもゾウが高いことなどが注目される。
ただし、問題はあり、たとえば、脳のすべてが知的活動に使われているのかどうかという根本的問題の一つである。イルカやカラスなどは素人の感覚でも確かに賢そうに見えるが、ゾウの数値が高いことはどうなのであろうか?それについては、次のように指摘されている。
「……while an
elephant has a much larger brain than a Stegosaurus,
a substantial part of the excess brain is bound up in bodily functions rather
than cognitive functions.……Some of these abilities may be sensory and/or physical, and some may
be intellectual. The actual intelligence of an animal therefore depends on the
size of the brain and the proportion of the brain that is used for intellectual
abilities, rather than advanced sensory or physical skills.」(「Encephalization
quotient」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
つまり、ゾウの脳化指数が大きいと言っても、その多くは知的機能として使われているわけではないわけなのである。脳化指数は、客観的・正確な数値として容易に得られるものであるが、しかし、それは単に脳の重さで比べるよりも少しはましであるだろうにせよ、脳と知能との関係を客観的・正確に示すものとはやはり言い難いのである。
したがって、アインシュタインや夏目漱石の脳についても、それぞれの体重を加味して脳化指数は出そうなものであるが、仮にそれが出たとしても、やはり、同様に、信頼できる比較数値とは成りえないであろう。問題は、単純な重さや、それとの体重比ではなく、まさに、脳の中身・構造がどうなっているかなのである。
7.アインシュタインの脳の構造
●頭頂弁蓋がなく、外側溝が発達していた
さて、アインシュタインの脳と知能との関係における問題の本質は、脳の構造問題ということになった。では、アインシュタインの脳は、何か、その構造において特徴的なものを見せるのであろうか?
「Harvey
noticed immediately that Einstein had no parietal operculum in either
hemisphere. Photographs of the brain show an enlarged Sylvian fissure; clearly
Einstein's brain grew in an interesting way.」(「Albert Einstein's brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
「parietal
operculum」がアインシュタインの脳にはなかった、ということであるが、この「parietal operculum」というのは、日本語では「頭頂弁蓋」である。また、専門用語の「Sylvian fissure」は、「外側溝(がいそくこう)、シルビウス裂(溝)、大脳外側溝」などの訳語が見える。つまり、アインシュタインの脳は「頭頂弁蓋」がなく、「外側溝」が肥大するという特徴をもっていた。
<参考> ●「Parietal operculum」(ウィキペディア英語版)
<参考> ●「外側溝」(ウィキペディア) ●「Lateral sulcus」(ウィキペディア英語版)
ウィキペディア英語版によれば、アインシュタインの脳に対するHarveyの所見を更に詳細に検討した研究がカナダの大学の研究チームによって1999年になされている。それについても見ておこう。
「In
1999, further analysis by a team at McMaster University in Hamilton, Ontario,
Canada revealed that his parietal operculum region in the inferior frontal
gyrus in the frontal lobe of the brain was vacant. Also absent was part of a
bordering region called the lateral sulcus (Sylvian fissure). Researchers at
McMaster University speculated that the vacancy may have enabled neurons in
this part of his brain to communicate better. "This unusual brain anatomy...(missing part of
the Sylvian fissure)... may explain why Einstein thought the way he did," said Professor
Sandra Witelson who led the research published in The Lancet. This study was based on photographs of
Einstein's brain made in 1955 by Dr. Harvey, and not direct examination of the
brain. Einstein himself claimed that he thought visually rather than verbally.
Professor Laurie Hall of Cambridge University commenting on the study, said,
"To say there is a definite link
is one bridge too far, at the moment. So far the case isn't proven. ……"」(「Albert Einstein's
brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
ここで「inferior frontal gyrus」は、「下前頭回」、「frontal
lobe」は、「前頭葉」である。このように、このチームの研究はアインシュタインの脳を直接に使ってのものではなく、Harveyが撮ったその写真をもとにしてのものではあるが、研究チームは、これまでに見たようなアインシュタインの脳の特徴から、アインシュタインが「he thought visually rather than verbally」言語的に思考しているというよりも視覚的/イメージ的に思考していると言っていた、そのような思考特性との結びつきを見ようとしている。
しかし、この分野の研究は今まさに進行中のものであり、ケンブリッジ大学のLaurie教授の言うように、現段階でアインシュタインの脳の構造とその思考的特徴の関連についての研究において、その結論を得たとするにはまだ時期尚早なものがあると言うべきであろう。
●発話・言語的認識に問題があるらしいことと、数学的高度な能力が示唆される?
このように、アインシュタインの脳と彼の思考特性についての科学的結論はまだ研究中の段階とすべきであろうが、それはそれとして、科学者たちがそれぞれに主張している見解をみておきたい。
「Scientists
are currently interested in the possibility that physical differences in brain
structure could determine different abilities. One part of the operculum called
Broca's area plays an important role in speech production. To compensate, the
inferior parietal lobe was 15 percent wider than normal. The inferior parietal
region is responsible for mathematical thought, visuospatial cognition, and
imagery of movement.」(「Albert Einstein's brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
ここで、「operculum(弁蓋)」は、これまでに、アインシュタインの頭脳には欠けていた/なかった「parietal operculum(頭頂弁蓋)」のことを言っているのであろう。その一部としてある「Broca's area(ブローカ野(や))」は、「speech production(発話/発生/音声合成)」を司る器官であるとされる。
つまり、上の文章ではそこまで言っていないが、このような脳の部位と機能との対応関係からすると、アインシュタインの脳は、頭頂弁蓋が欠けていることから、発話を中心としたコミュニケーション能力で何らかの問題があったことを示唆している、ということなのであろうか。
そして、それを補うかのように、アインシュタインの脳は「inferior parietal lobe(下頭頂葉)」が一般より15%も肥大/発達していた。この部位は、「mathematical thought(数学的思考)」、「visuospatial cognition(空間視覚認識/視空間認識)」、「imagery of movement(運動や動作のイメージ化)」を担うものである。
●発話・言語理解を司る「Broca's area(ブローカ野)」
「Broca's
area(ブローカ野(や))」の機能について更に詳しく見てみよう。
「ブローカ野(ぶろーかや、英: Broca's area)は、人の脳の領域の一部で、運動性言語中枢とも呼ばれ、言語処理、及び音声言語、手話の産出と理解に関わっている[1]。ごく単純に言えば、ノド、唇、舌などを動かして言語を発する役目を負っている。……ブローカ野は言語の理解と産出に対する役割によって、主に2つの部位に分けられる。:/ 三角部 (前側): 様々な刺激(複合モダリティー刺激の連合)の'モード'の理解、言語行為の計画を担うと考えられている。/ 弁蓋部 (後側):1種類のみの刺激(単一モダリティー刺激の連合)に対する処理や、運動野に近いことから、音声言語産出のための発声器官の調整を担うと考えられている。」(「ブローカ野」ウィキペディア。2012.4.6引用)
このように、弁蓋部のブローカ野は、音声言語産出、つまり発話に関わるとされる。さらに、英語版のウィキペディアで「Broca's
area」の記事を見てみよう。
「For a long
time, it was assumed that the role of Broca's area was more devoted to language
production than language comprehension. However, recent evidence demonstrates
that Broca's area also plays a significant role in language comprehension.
Patients with lesions in Broca's area who exhibit agrammatical speech
production also show inability to use syntactic information to determine the
meaning of sentences.」(「Broca's area」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用。)
この記事によると、ブローカ野は、音声言語産出/発話だけでなく、言語理解にも関わっているとされる。
●図形的・数学的能力を司る「inferior parietal lobe(下頭頂葉)」
アインシュタインの脳で、一般より15%も肥大/発達していたとされる「inferior parietal lobe(下頭頂葉)」について、ウィキペディアで「頭頂葉」の説明を見てみよう。
「頭頂葉は異なる感覚モダリティーから感覚情報の統合を行っており、特に空間感覚と指示の決定を担っている。例えば、頭頂葉は体性感覚野と視覚系の背側皮質視覚路を構成している。これにより頭頂葉において、視覚によって知覚した対象の位置を身体座標における位置に変換することが出来る。……頭頂葉は身体の様々な部位からの感覚情報の統合や、数字とそれらの関係に関する知識[1]、対象の操作などに関する機能に重要な役割を持つ。頭頂葉の一部は視覚空間処理に関わっているともされていて、頭頂葉は他の3つの大脳葉に比べてほとんどよく分かっていない大脳葉である。」(「頭頂葉」ウィキペディア。2012.4.6引用。「Parietal lobe」(ウィキペディア英語版)も同内容。)
●文系ではなく、理系の脳として特徴的なアインシュタインの脳?
アインシュタインの脳における「parietal
operculum(頭頂弁蓋)」つまりは、また「Broca's area(ブローカ野(や))」の欠如から推定される発話や言語理解における障害ということは、発話や言語理解を基本的には文系能力とすれば、アインシュタインの頭脳は文系的頭脳ではなかったということを意味するのだろうか?
また、アインシュタインの脳における「inferior
parietal lobe(下頭頂葉)」の発達ということは、アインシュタインの頭脳は極めて理系的頭脳であったということを意味するのだろうか?
●そのほかのアインシュタインの脳の特徴:「glial cells(グリア細胞)」の研究
このほかのアインシュタインの脳の研究としては、カリフォルニア大学のM. C. Diamondによる「glial cells(グリア細胞/(神経)膠細胞)」の研究が知られている。それは次のようなものである。
「In the
1980s, University of California, Berkeley professor Marian C. Diamond persuaded
Thomas Harvey to give her samples of Einstein's brain. She compared the ratio
of glial cells in Einstein's brain with that in the preserved brains of 11 men.
……Einstein's brain
had more glial cells relative to neurons in all areas studied, but only in the
left inferior parietal area was the difference statistically significant. This
area is part of the association cortex, regions of the brain responsible for
incorporating and synthesizing information from multiple other brain regions.」(「Albert Einstein's
brain」ウィキペディア英語版。2012.4.6引用)
本研究では、DiamondがHarveyから手に入れたアインシュタインの脳の実物切片/標本が使われている。Diamondは、それを彼女の研究室にあった11人の男性の脳と比較して、「glial cells(グリア細胞/(神経)膠細胞)」の比率を比較したのである。
グリア細胞とは、次のようなものである。
「グリア細胞 (グリアさいぼう、英:
glial cell)は神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)とも呼ばれ、神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称であり、ヒトの脳では細胞数で神経細胞の50倍ほど存在していると見積もられている。……グリア細胞は周辺組織の恒常性を維持するような、比較的静的な役割を演じることでシグナル伝達に貢献すると考えられてきたが、近年になって、多種多様な神経伝達物質の受容体が発現していること、受容体へのリガンド結合を経てグリア細胞自身もイオンを放出するなど、これまで神経細胞のみが担うとされてきたシグナル伝達等の動的な役割も果たしていることが次々に示されてきている。」(「グリア細胞」ウィキペディア。2012.4.9引用)
「For over a century, it was believed that they did not play any role
in neurotransmission. That idea is now discredited; they do modulate
neurotransmission, although the mechanisms are not yet well understood.……Some glial cells function primarily as the physical support for
neurons. Others regulate the internal environment of the brain, especially the
fluid surrounding neurons and their synapses, and nutrify neurons. During early
embryogenesis glial cells direct the migration of neurons and produce molecules
that modify the growth of axons and dendrites. Recent research indicates that
glial cells of the hippocampus and cerebellum participate in synaptic
transmission, regulate the clearance of neurotransmitters from the synaptic
cleft, and release gliotransmitters such as ATP, which modulate synaptic
function.」(「Neuroglia」ウィキペディア英語版。2012.4.9引用)
このように、グリア細胞の研究は、まさに現在進行中のものでまだ分からない部分が多いようであるが、神経同様に伝達機能を果たすなど、その機能の重要性が着目されているわけである。
Diamond自身は、アインシュタインの脳では神経細胞に対するグリア細胞の比率が一般的に高いが「only in the left inferior parietal
area was the difference statistically significant」左の下頭頂領域が統計的に意味のある差異を見せていることに注目している。脳のこの領域は、「responsible for incorporating and
synthesizing information from multiple other brain regions」、つまり多数の他の脳の領域からの情報を組合せ統合する仕事を受け持っているわけで、Diamondは、その点におけるアインシュタインの脳の優越性を見ようとしているようである。
ただ、この研究については、研究者自身、その検体比較数の少なさなど研究方法自体の制約を認め、また、他の研究者たちからも比較年齢がアインシュタインと他の検体とで違うことによる脳の構成成分の違いの可能性など、本研究方法についての批判がある(詳細は、「Albert Einstein's
brain」ウィキペディア英語版)。
したがって、これまでに見て来たアインシュタインの「parietal operculum(頭頂弁蓋)」や「inferior parietal lobe(下頭頂葉)」における特徴の研究同様、本研究についても、まだ、確定的なことを述べられる段階ではないようである。
8.まとめ
脳科学についてまったくの素人である私がアインシュタインの脳についての研究で言えるものは何もない。以下のまとめは、あくまでも、単なる素人の個人的感想である。
●物理的に特異な特徴を示すアインシュタインの脳についての研究は進展中であり、最新の脳科学・認知科学による新たな研究成果を待ちたい
これまでに見てきたように、アインシュタインの脳には、物理的に顕著な特徴(あるいは(一般と違うという一般的意味において)「奇形性」)があった。それらの物理的特徴が意味するもの、とりわけ、彼の「天才的」と呼ぶにふさわしい知能との関係については、科学的に、まだ結論的なものを言える段階ではないように見える。
脳科学は、認知科学との関連においても、まさに、今日の科学が取り組んでいる主要な研究の舞台である。脳科学・認知科学の最新の研究水準において、アインシュタインの脳についても、新たにその総合的な研究がおこなわれることを期待し、その報告を待ちたい。
●アインシュタインの脳が多くを先天的なものに負うのか後天的な形成によるものなのかについての科学的な答はない。しかし、一つの仮説、あるいは信念・信仰として、大切なことは、アインシュタインが先天的にどのような脳を持って生まれたかではなく、彼が、後天的にどのような学習・研究をどのようにし、どのようにして彼の脳を作ったか、どのように脳を使ったかであると考えたい
脳の先天的な(つまり、生れつきの)要素として脳の重さをあげるなら、それは、知能との関係においては、まったく重要ではないと言うことは、はっきり言えた。
それ以外の、アインシュタインの、物理的に特徴的/奇形的な脳の構造について、それが先天的なものなのか後天的なものなのかを決するデータはない。永久にないだろう。
物理的に特徴的/奇形的な脳の構造があったからこそアインシュタインは天才的研究を成し得たのか、アインシュタインが学習・研究に打ち込んだからこそ物理的に特徴的/奇形的な脳が形成されたのかという問題は、アインシュタインがどのような物理的な脳を持って生まれ、それがその後の彼の学習・研究によってどう変形していったかというデータを得られない限り、永遠に解答不能なのである。私たちが持っているのは、アインシュタインの死後に残った彼の脳だけなのである。
しかし、科学的裏付けのない一種の信念・信仰としては、この問題の答を、それぞれがどう考えようと自由である。
私は、そのような信念・信仰の立場においては、天才の代名詞と言ってもよいアインシュタインにしても、生れつきの彼の脳が物理的にどうあったかということよりも、彼が後天的に(つまり、その人生で)どのように学習・研究をおこなって彼のその特徴的な脳を作ってきたのか、ということが大切であり、決定的であったというように考えたいように思う。
そのような立場・信念・信仰に立てば、君でも、あなたでも、アインシュタインのように集中して専門的・効率的に学習すれば、あるいは、第二のアインシュタインとなれるかもしれないのである。そうなってほしいと思うのである。
名声や金銭のためにというよりも(名声や金銭も、無論、生きてゆく以上、それぞれの生における大切な存在基盤ではあるだろうが、それらが生きることの目的自体になっては、本末転倒なのかもしれない)、誰も知らない未知の科学的知見・創造的世界に「知的・感覚的に遊ぶ」ことこそが、人間がこの世に生まれこの世の生を楽しむ、おそらく最大の喜びの一つとなりえるのだろうから。
●アインシュタインの創造性の秘密/具体的学習・研究方法
最後に、アインシュタインの創造性や学習方法について、彼自身の言葉に、そのヒント/秘密を探ってみよう。
「知性とは、方法や手段に対して鋭い鑑識眼を持っているが、目的や価値に対して盲目である」(「アルベルト・アインシュタイン」ウィキペディア。2012.4.6引用。)
「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことだ」(同上)
「何かを学ぶのに、自分自身で経験する以上に良い方法はない」(同上)
「学校で学んだことを、すべてを忘却してもなお残っているもの。それが、教育である」(同上)
「我々の進もうとする道が正しいかどうか、神は前もって教えてはくれない」(同上)
「私は、理詰めで考えて新しいことを発見したことはない」(同上)
「空想は、知識よりも重要である。知識には限界があるが、空想は世界すら包み込む」(同上)
「調べられるものを、いちいち覚えておく必要などない」(同上)
「物事は全て、出来る限り単純にすべきだ」(同上)
「私は天才ではない。ただ、ほかの人より一つの事と長く付き合ってきただけだ」(同上)
どうであろうか。これらの言葉に、君は/あなたは、どのような人間像、頭脳像、そして、どのような具体的学習方法・研究方法を見るだろうか?また、自分として取り入れられるものはあるだろうか?
アインシュタインという、人類史上屈指の頭脳の持ち主の、率直で正直な言葉(それはそう信じるしかないことだが、彼の生き方や人生・科学に対する態度を読んでそう思える)である。ぜひ、じっくりとかみしめ、それぞれにおいてよく考え、学べるところは学んでいってほしいと思う。
<参考> ●「アルベルト・アインシュタイン」(ウィキペディア)
<参考>●「Albert Einstein」(ウィキペディア英語版)
<参考> ●「Albert Einstein」(ウィキペディアドイツ語版。ドイツはアインシュタインの母国であり、ドイツ語は母国語である。ドイツ語版のウィキペディアには、多くの彼の写真もあり、記事も詳細である。ドイツ語が読めなくとも、写真でその人生を視覚的に見てはどうだろう。)
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